WordCamp Tokyo 2017 で僕の半生について喋ってきました

WordCamp Tokyo 2017 に参加してきました。今回はスピーカーに応募して「地方Web制作者とWordPress ー僕がどのようにしてWordPressに関わるようになり、独立するに至ったかー」という話をしたり、実行委員長である Mignon Style さんにお誘いいただき Web 制作班として公式サイトの制作をしたりしました。せっかくなのでそのへんのことも残しておきたいと思います。

WordCamp Tokyo 2017 公式サイト制作

WordCamp Tokyo 2016 実行委員長の高橋文樹さん、北海道のハムさんと僕の3人のチームで担当しました。WordCamp のサイトは制作に関して一定のルールがあり、オリジナルのテーマを使うことができません。つまり、既存のテーマを使う必要があり、テーマの HTML を変更したり JS を追加したり、もちろんプラグインを使うこともできません。ただ、CSS を追加することと、ウィジェットを使用することはできるので、基本的には CSS でこれでもかというくらいスタイルを上書きしてデザインを作っていくことになります。オリジナルで要素や HTML を追加したいときはテキストウィジェットを追加してそこに HTML をゴリゴリ書いて追加します。

そういうルールであることは噂で聞いて知ってはいたのですが、実際やると結構大変でした。でも文樹さんが最初に開発環境をまるっと用意してくれたり、過去に制作を担当されていたこともあって大枠をかなり作ってくれたので特にトラブることはなく制作することができました。開発は GitHub で行っていてコミットログとか issue とか全部見れるので、気になる方はご覧ください。

リハーサル

これは僕は今回ほんとにスゴイなと思いながら見ていたのですが、全てのセッションにおいてスライドのチェックと、初登壇の人にはオンライン(オフラインの場合もあったのかな)でリハーサルがありました。いろいろ賛否両論はあるのかもしれませんが、セッション班の方から「会場の配置とかスクリーンがこういう感じなのでもう少しこうした方が見やすいですよ」とか諸々アドバイスを頂き、会場は当日しか行けないのでこういうアドバイスを頂けたのはかなりありがたかったです。あと、僕は初登壇ではなかったのですがリハをすることになり、そもそも喋るのが苦手なのでリハするの恥ずかしくて、うぉ、まじでやるのか…と思ったりしたのですが、実際やってみると事前に反応がみれたりとか、時間の感覚がつかみやすかったのでやって良かったなと思いました。セッション班の方はこれをいくつもやっていて連日仕事がある中でかなりの時間を割かれていたのだろうと思いますので、なんかこうイベントを良いものにしようというのが感じられて良いな〜と思いました。

前夜祭

実行委員とスピーカーが参加できる前夜祭があるということで参加しました。本編は本編でもちろんおもしろいですが、こういう懇親会というのはより濃い〜話になったり、激論が見れたりするので、なるべく最後までいたいなといつも思っています。前夜祭は最後までいてホテルに帰ったのがもはや早朝みたいな感じでしたが、初日、2日目の懇親会は途中で力尽きました。でもいつもの皆さんはいつ寝てるのというくらい連日楽しまれていたので、やっぱりデキる人は体力が違うなと思いました。最近すぐヘバッてしまうので体力をつけなければ…。

セッションデイ

WordPressサイト構築プロジェクトマネジメント -何故プロジェクトはいつも最後にバタバタするのか-

株式会社 mgn の代表、メガネさんのセッション。メガネさんは喋るのもうまくてこのプロジェクトマネジメントの話ももちろん面白かったのですが、最初のセッションということで、WordCamp の主旨とか思想みたいなことを話されていたり、本題のセッションを少し早めに切り上げて、テーマ/プラグインを開発して実際に公開している人ととユーザーをつなぐような話をされたりしていて、僕なんかは自分のことだけで精一杯なので、そういうところにも配慮して場を良いものにしようとしているのがとてもスゴイなぁと思いました。

お世話になっているプラグインには星をつけたりレビューを書いたりしましょうという話をされていたのですが、実際セッションの後にポジティブなレビューが増えていたりして、普段 Twitter でエゴサーチしていると皮肉ったり小馬鹿にされてたりすることが多いので、こういうフィードバックが実際に増えるというのはなかなか嬉しいものがありました。

Gutenberg が切り開くWordPress の新UX

ノビル株式会社の代表、西川さんのセッション。Gutenberg というのは現在開発中の WordPress の次期エディタ。概要は知っているし動作も前に一回見たことがあったのですが、セッションの開始前からスクリーンで最新のデモ動画が流れていまして、まーそれがすごいすごい。ブロック単位でドラックアンドドロップで要素を移動できるのはもちろん、背景色を設定したり(今のエディタはブロックの背景色を塗れない)、段組みをシームレスにつくったり、それぞれの動作もサクサクで驚きました。React のライセンス問題があったのでコアに取り込まれるのはまだ先になるのかなと思いますが、これが取り込まれればユーザーの執筆/ページ制作体験はかなり向上すると思うし、いろいろ問題になりがちなページビルダー系プラグインについても(その開発者にとっても痛いかもしれませんが)標準的なレールができるし色々な問題がクリアになるのではないでしょうか。

僕が有料テーマのためにつくったWYSIWYG への HTML コンポーネント挿入機能も、できたときはこれでテーマが売れるかもしれない!と思いましたが、Gutenberg のデモを見て一瞬で無になったので、それは悲しかったです(泣)

How to Grow Your WordPress Business by Saying “No!” / WordPress ビジネスを成長させるための「No」と言う力

オランダ在住の Manuela van Prooijen さんのセッション。近年の WordCamp の海外スピーカーセッションは同時通訳があるのですが、そうは言ってもやっぱり英語わからないと理解が難しいのではないかということで敬遠していました。でもこのセッションは興味があったので参加してみると、同時通訳にめちゃめちゃ感動しました。よくテレビの緊急ニュースとかで同時通訳があったりしますがまさにそれな感じで、これは海外スピーカーのセッションだからと敬遠するのはもったいないです。

内容としては、なんでもかんでもムリに請けないで自分のやりたい仕事に集中しようというもので、僕も結構できないことはできないと言っているほうだと思うので、もちろん共感できるはなしだったのですが、おもしろかったのは、そもそも「やりたくない仕事をなんとなく請けないといけない状況が海外にもあるんだな」ということでした。こういう仕事ありますよね、とか、こう考えますよね、というのが日本のそれと全く同じで、「海外の IT 業界はこうなのに日本はこうなのでダメ」みたいな言説をよく見かけますが、いや、全然一緒じゃんと。むしろ実際にはそんなに違いがないのに「日本はダメ」とか言ってるからダメになるんじゃないのと思いました。

地方Web制作者とWordPress ー僕がどのようにしてWordPressに関わるようになり、独立するに至ったかー

そして僕のセッションです。ランチセッションという形で、皆さんがお昼ごはんを食べる場所でセッションをしました。事前の打ち合わせでは「セッションを見たい人だけじゃなく普通にお昼を食べたい人たちとか雑談する人達もいるはずだからどうやって集中させるかが大事かもですね」という話をしていたのですが、普通にみなさんセッションを聞いていてビビりましたw

スライドです。多分そのうち動画も公開されると思います。ちょっと用意していた原稿よりも余計にしゃべりすぎちゃって少し時間オーバーしてしまったかもですが、Twitter なんかを恐る恐る見てみるとわりと良い印象を頂けたようで良かったです。

結構締め切りギリギリに応募したと記憶していますが、WordBench 山口でメガネさんが自分のこれまでの半生についてしゃべっているのを見て勇気づけられたというか、もっと頑張らなければと思えたので、僕はメガネさんほどアグレッシブなことはしてきていないものの、こうやって仕事のない地方でも独立してやっていくことができる状況になったので、少しでも誰かの背中を押すことができればと思ってこの内容で応募しました。他の人の人生にも興味があるのでぜひ皆さんの人生の話を聞けるのも楽しみにしていますw

アンカンファレンス おすすめプラグイン & テーマ

おすすめのプラグインやテーマを紹介しようというアンカンファレンスに参加しました。僕は結構自分で作っちゃうほうなので、何か情報収集できれば良いなという気持ちで参加しました。ところが、座ったテーブルがコミュニティ側の人達ばかりの強いテーブルで「おすすめのものを紹介する」のではなく「自分がどういうものを作っているか紹介する」になってしまったのが面白かったですw 同席したものくろさんには WordCamp Kyoto のときに有料テーマをつくるためにいろいろアドバイスを頂いたりしたのですが、このときもものくろさんが作られたプラグインがものすごくニッチだけどなるほど!というものばかりでとても参考になりました。同じ WordPress ユーザーではありますが、立ち位置が違う方の話を聞くというのは自分では思いつかないアイデアを得ることができるので大事ですね。

世界で一人しかできない WordPress コアを写経する話 ― 修行の先に見たものとは?

「天才」「変態」の異名を持つ Kite さんのセッション。WordPress コアの写経をしているというのは以前から知っていて、リポジトリにもスターを付けてたりしたのですが、セッションで実際の手順を拝見して、「あ、これは違う世界にいっちゃってるな」と思いましたw 少なくとも僕にはムリだけど、Kite さんが Kite さんである理由が垣間見れて面白かったです。

Konichiwa: What I’ve learned helping a Japanese WordPress start-up grow in the US / 日本産 WordPress サービスの米国展開から学んだこと

デジタルキューブ COO、Daniel Olson さんのセッション。今回一番楽しみにしていたセッションでした。最近デジキューさんのサービスのサイトの雰囲気が目に見えて変わっていて、海外の WordCamp に参加したときに色々あって戦略的なブランディングの大事さを痛感した(いつもお酒が入った状態で聞いているので意訳)的な話を聞いていたので、どういう考えでどういう展開をしているというのが聞けてとても興味深かったです。

「技術を伝えることにフォーカスしすぎず、わかりやすく価値を伝える必要がある」という話がでていて、僕もそうしがちなので、今準備中の有料テーマを販売するときはそのあたりのことも考えていつもと違う展開をしたいなと思います。

このセッションでも「海外と日本の起業の違いはなんですか?」という質問に対し「ないです」的な答えをされていたので、やっぱりねと思いました(といっても働かれているのがデジキューさんなので、ないですといってもまぁ、という気はしますがw)。こちらの記事も超面白いのでぜひ。「WordCamp Europeに参加した〜SaaSify、そして第3の波:Serverless」「Shifterはどう生まれたのか?WCEU 2016からの1年間のお話

AMA テーマ制作をしている人に聞いてみよう

AMA は「Ask Me Anything」の略で、何でも聞いてねという登壇者のみなさんに質問をしまくる会です。参加したのはテーマ制作に関する AMA で、登壇者はアラタナの高見さん、テーマ「」の作者・今村さん、テーマ「tsumugi」の作者・高橋さん。僕も日々テーマを作っていますが、どうしたらもっと効率的にできるかというところが常に一番考えているところで、他の識者の方はどうしているのか知りたくて参加しました。

僕が質問したのは「現代の Web 制作は NPM や Composer を使うので package.json とか composer.json などの設定ファイルを themes/my-theme の直下に置くことが多いと思いますが、WordPress のテーマは themes/my-theme の直下にテンプレートファイルを配置する必要があるのでそれらテンプレートファイルと設定ファイルが混在してファイル構造をきれいにできないのを精神的にどう折り合いをつけているか、あるいは何か混在させないで済む対処法があるか」ということです。返ってきたのは「そんなものは無い、そういうものだと割り切る」という答えでしたw 僕もいろいろ試しましたが半ば諦めていて、もう開発中はどうしようもないからビルドされたものさえきれいになっていれば良いんじゃないかな…というところです。

ちょっと時間が短かかったのが残念でした。公式ディレクトリにテーマを掲載する方が増えてきたとはいえ、そこまで深くやりこんでいる人はまだそう多くはないという印象なので、もっと長い時間で小さめの部屋でできるともっと面白いのかなぁと思いました。AMA、アンカンファレンスだけの勉強会とか超楽しそう。

懇親会

会場でそのまま懇親会がありました。例年僕は前のほうをうろうろしていますが、今年は後ろのほうにいました。前のほうは LT などで盛り上がっている様子でしたが、後ろのほうは後ろのほうで近くの人と懇談されている人が多かったように思います。僕もいろいろな方に話しかけて頂きまして、名刺を交換すると「これは最近ロゴ変えたやつですよね!」とか、結構ブログを見てくださっている方がいるんだということがわかって嬉しかったです。

で、「プラグイン使ってます、あんなにできるとお忙しいですよね」みたいな話になることが多いのですが、話してみると自分で会社を経営していて人を雇用しているという方が結構いらっしゃって「いやいやあなたのほうが全然すごいじゃないですか」ということが多かったです。僕はまだまだ売り上げに波はありますし、とてもじゃないけど雇用して毎月給与を払うというのは不可能なので、自身もクリエーターでありながらそういったことをされている方はとても尊敬します。WordCamp だと知り合いとばかり話しがちなのですが、今年の懇親会ははじめての方とたくさんお話できました。食事も気づいたら無くなっていて何も食べられなかった…ということが多いのですが、後ろのほうだったからか食事もちゃんとできて良かったですw

コントリビューターデイ

2日目のコントリビューターデイはプラグインを公開しよう班のメンターを担当しました。残念ながら公開までいたる方はいなかったのですが、プラグインをつくるところまではできたという方が複数いらっしゃって嬉しかったです。

結構皆さんもくもくとご自身で進められていたので、僕はコアにパッチを送ってみたりしていました。正直バグと言って良いのか微妙な感じで、恐らく取り込まれることはないだろうなと思いますが、いろいろな気付きが得られました。同じくプラグイン班のメンターだったひなろえ君にパッチを送るにあたりコアコードの解析を手伝ってもらったので助かりました、ありがとうございます!

おわりに

ということで、登壇者としても参加者としてもとても楽しめました。一応 Web 制作班でサイトのコーディングをしたりはしましたが、それ以外は全然感知していなかったので他の班がどうだったのかは全然知りませんが、どの班も多分大変だったと思いますし、会場班や当日班は当日もとても大変だったんじゃないかと思います。年々規模が大きくなっていてスタッフの負荷も増えてきているのではないかと思いますが、WordPress のためにこれだけ多くの人が集まったりわーわー言ったりする場がこうやって提供されるというのはすごく意味のあることだと思いますので、できればあんまりみんなが無理をしないで継続可能な形で続けていけると良いんじゃないかなと思いました。スタッフのみなさんお疲れ様でした!

それと、京都のときから、もっと小さい WordCamp をしたいねという話がでていました。みんなサポートしてくれるはずなのでやりたいという方がいたらぜひ声を上げると良いのではないかと思います。WordBench 長崎を休止している僕がいうのも何ですが…。

  • ブックマーク
  • Feedly

この記事を書いた人

キタジマタカシ

長崎在住、フリーランスのWordPress テーマ / プラグインデベロッパー。 多数のプロダクトをオープンソースで開発・公開しています。現在は WordPress 有料テーマ Snow Monkey を開発・販売しています。